日本沈没を読みかえす

テーマ:よもやま話
久しぶりに小松左京さんの「日本沈没」を読み返してみた。

まだ半分で、第2関東大震災のくだりのところまでであるが、なかなか興味深い。

田所博士の言葉 「一つの地震によって放出されるエネルギーの最大値は、地殻の性質によって、マグニチュード8.6―5×10の24乗エルグを越えることはない。・・・・・・・これまでは、M8.6以上の地震は起こらなかったかもしれん。これまでの知識にもとづいた理論によるなら、それ以上の地震は、起こり得ない、と考えられるかもしれん。しかし――これから、過去において、一回も起こらなかったようなことが起こるかもしれない。たとえば――一単位地震体積あたり、5×10の24乗エルグのエネルギーの最大エネルギーをたくわえた地殻がいくつもならび、それが一斉にエネルギー放出をやったらどうなるか?」

この情報は1970年頃当時の情報なのかもしれないが、実際にはM8.8以上の地震が起り、M8クラスの地震が次々と起った。

こんな内容も面白い。

 ――戦前、あるいは、少なくとも明治までの日本の社会では、「家」と「世間」というものが、社会の基本単位になっていて、男は成人すると、「家」を代表して「世間」とつきあうか、あるいは「家」を出て、「世間」の中にはいって行くかした。――しかし、戦後は、この関係がまったく変わった。「家」は「核家族」にまで解体する一方、人口の増加、所得の上昇、社会内における各種組織密度の高度化、社会保障の充実、教育年限の長期化などによって、社会の「過保護状態」「高密度化」が飽和点に達し、男は、両親の庇護のもとからはなれても、「波風荒い〃世間〃に出て行く」とはいえないような状態になってきた。そのうえ、この社会の保護過剰状態に対応した、女性の社会への大量進出がある。現在では、日本の社会そのものが総体的「マイホーム化」しつつあり、男は身体的に成熟しても、生ぬるい「家庭化した社会」の中で、たくましい「成人(アダルト)」になる場を見いだせない。――あたかも、川で卵からかえり、海へ下って、広い海洋を泳ぎまわることによってたくましい「成体」になる鮭鱒類が、地形の変動などによって陸封されてしまった場合は、琵琶湖の小アユや、東北のヒメマスのように小型化してしまい、そのまま大きくなることなく一生を終えてしまうように、あるいは渡り鳥が「渡り」によって、一人前になるように、人間社会にあっても、とくに体型的精神的に特殊化のすすんだ「雄」は、「荒々しい〃外部〃」の冷たい風にあたらないと、一人前の成人になれないのではないか?――日本の若い男性が「女性化」しつつあるというのは当然のことで、「マイホーム化」した社会の中では、主役の座は女性によってうばわれつつあり、男はいつまでも、家庭の中で過保護状態で育てられた子供のように、ひよわでいつまでたっても幼児的であり、あるいは女性化するのは当然である。このままでは、男はますます小アユ化するだろう。――といって、日本社会の中は、あらゆる意味で「飽和化」「家庭化」してしまっているとすれば……新しい「世間」はもはや日本の「外」にしかないのではないか。「国家」は、かつての「家」となり、「世界」がかつての「世間」となるのである。日本人の民族としての健康のためにも、これからの日本では、国内のことは、女と老人にまかせ、男は海外に出て、自らを新時代の「世界のおとな」としてきたえ上げねばならない、云々……。

内容は40年経っても十分通用するほど興味深いなぁ。
当時はジェンダー意識はなかっただろうから、主題は「男」になっているけどね。
(最初の原作で阿部玲子がお嬢様で、最近の映画化ではハイパーレスキュー隊員だったように。彼女は第2部では国連のエージェントだ)

彼の作品は「果てしなき流れの果てに」「継ぐのは誰か」「復活の日」にしても、文明論的な問いかけをしてくるがゆえに考えさせられることが多い。

筒井康隆の「日本以外全部沈没」は純粋に楽しめるけどね。

小松左京「日本沈没」より引用

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