朝までクールジェル事件の示唆するもの

テーマ:眠るための道具・寝具のお話
「朝までクール」といいながら実際には30分程度しか冷たくない、として国民生活センターが発表した事件は、寝具業界には激震が走りました。なんせ、夏の目玉が少ない業界ですから、業界こぞってこのタイプの寝具に夏の商戦をかけていたところがあります。

「これを使う時はエアコンを26℃ぐらいに入れて使ってくださいね。そうしないと涼しくありませんよ」と説明して売っていたお店があったそうですが、26℃でエアコン入れるのなら最初から必要ないですよね。どこかに無理している、と判っていながら、全国的に売れている、はやっているということで販売していたところも多いんじゃないでしょうか?。

何故こんなことになってしまったのか?反省しなければ、また同じようなことが起こる可能性は非常に大です。
その理由の第1は
十分なテストをせずに出荷してしまう
ことにあります。こんなことは寝具業界ではしょっちゅうです。

社員全員に配って1ヶ月間テストを行えば、欠点は十分に把握できたはずです。ところが、それをせずに物理特性だけ(この場合は冷えるということ)を信じて販売に踏み切ってしまうわけですね。

今回の特徴はさらに
睡眠科学を無視した
という、唖然とする現状があります。

確かに、ヒトは入眠すると深部体温を下げます。そのために入眠前には熱を放出するために、手足耳など抹消血管をラジエーターとして使います。その意味からいえば、体を冷やす行為は決して間違いではありませんが・・・
快適な寝床内は温度33℃湿度50%であるということです。この数字については一部で異論もあるようですが、寝具の温度が皮膚表面温度に平衡することは間違いなく、この時湿度が高いと不快指数が上がる。即ち、快適な寝具の条件は適切な湿度調整であることには広く知られています。
ですから、汗を放出する皮膚表面の近くに、透湿性・吸湿性のない素材を使うことは、即蒸れにつながることは容易に類推できることです。それをシーツ1枚使ってくださいではあまりです。

一昨年販売した時も、私の店では「上に吸収力の強い敷きパッド、もしくは厚手のタオルケットを使ってください。」とご説明いたしましたが、この製品単独での温湿度コントロールに難があるとして、昨年は取り扱いを中止した経緯があります。

同じようなことは、マニフレックスや低反発マットレスの説明にもあって「ウレタンフォームがオープンセルなので通気性が抜群」と謳ったにもかかわらず、実際は湿気がこもってカビが生えたり、マットレス面で蒸れが生じたりすることはざらでした。 素材屋の言うことを額面どおり信じたらいけないのですけど、どうも体質的に多いですね。

他山の石とすべき事件でありました。

P.S. なんかここ数日、ネットで本麻敷パッドのご注文が増えているのですけど、この事件のせいかな?


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