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羽毛の原料価格が25%アップ-当世羽毛事情

テーマ:羽毛ふとんのお話
先日、私どもの羽毛原料の調達先である河田フェザーさんが来られて、新しい羽毛の見積りをいただいた。

価格は落ち着いているかと思ったのだが、昨年末からさらに25%の値上げである。価格もだが羽毛のラインアップのバリエーションが非常に少なくなっている。

こうなった原因をお聞かせいただいた。
一昨年からの羽毛原料の高騰は、円安という為替レートの問題でさらに輪をかけたものとなっている。原料が高騰する中で出回ってきたのが、グースにダックを混入するなどはかわいい方で、中古羽毛の混入や増量剤の使用が中国原料中心に非常に増えているという。

たしかに、原料価格が倍になったからといって、そのまま転嫁することは非常に難しい。特に西川などの製造卸は販売部との兼ね合いもあって、そのまま「30%値上げします」とはなりにくい。つまり、値ごろ商品を作らなければならないというのは、私も現場を知っているからよくわかる。

そうなるとどうなるか、販売サイドの要求は目に見えていて「グースダウンで39,800円とか49,800円で販売できるものを」、それに対し商品部サイドはどうするかというと、まず生地を軽量化すること。軽量化することにより、中の充填量を減らせるからなのだ。この1~2年側地が急激にポリエステルやポリエステル混が増えたのはこの理由が大きい。ポリエステルの生地は通気度が悪いが、背に腹は代えられないということだろう。

次に、真面目な原料メーカーに要求しても無理なので、無理を聞きやすい台湾や中国の原料業者に言うことになる。「ハンガリー産でダウンパワーこれぐらいのグースをこの値段でね」。向こうは「はいはい」といって、その価格に合わせた原料を用意する。ハンガリー産という表示をしておけばいいので(場合によっては産地証明書をつければ)、産地を確定するトレーサビリティなどあるわけもなく、グースとダックは2倍以上価格がちがうから、ダックを混ぜて価格合わせをするというのがいいところである。ヴァージン羽毛だけならまだましかもしれないが、低価格への要求がきついと、前述のように中古羽毛を混入させることになる。

河田フェザーさんによれば中古羽毛は流通量の1/3をも占めるそうだから、市場の羽毛布団はほとんど疑ってかからないといけない。カウフマン社ですら、ヨーロッパ市場向けのグースダウンは10~15%ほどダックが混入するそうである(ヨーロッパは表示が日本より甘い)ので、純粋にグースのみの原料を選んでいるぐらいなのだから。残念ながら中国の原料メーカーは利益優先になってしまい、ちゃんとした産地ごとのコントロールができていないという。

結局、訳のわからない羽毛が大量に出回る中で、河田フェザーさんとしては、トレーサビリティのしっかりした長期飼育の本物の羽毛だけに絞ることにしたのだそうである。その結果、従来産地表示をしていた羽毛の中には産地混入されていたものもあったらしく(この理由は河田さんらしく、河田さんの厳しい羽毛のかさ高をキープするために混入していたらしいが)、これらの羽毛はラインアップから消えることになったという。

本物の羽毛だけを選んだ結果が25%アップの価格である。ある程度の規模を動かさなければならない企業として、この決断は非常に難しいものだったと思うが、その姿勢には共感するし、私どもの企業姿勢と一致する。悪貨が良貨を駆逐してもらっては困るのだから。

確かに、価格アップはきついが、品質の確保は羽毛布団を自家製造してお届けする私どもの生命線である。いい加減な羽毛原料を入れて販売するわけにはいかない。
このことはお客様にご理解をいただきたいと思うのである。

河田フェザーさんのホームページには現在の羽毛の状況や取り組みが紹介されている。
羽毛の現状についてはこちらを参照されたい

ホワイトグース

マザーダウンという不思議な現象

テーマ:羽毛ふとんのお話
もしあなたが羽毛布団を購入しようとネットでお探しなら、最近マザーグースとかマザーダックという表示がやけに多いのに気が付かれるだろう。

マザーグースとは何か?歌のことではなくて、産卵のための親鳥を指す。3~4年ほど飼育されるのが一般的だ。卵を産むということから、健康で体格が良い鳥が選ばれる。

ハンガリーの農場を訪れた時のことだ。その時はたまたまオスの選別を行っていたのだが、選別の方法はと聞くと「体格とアソコが大きいかどうか」だったので、我々がグースだったら・・・・と一同首をすくめたことがある。要は健康な遺伝子を残そうということだ。

ハンガリー

で、この体格が良く健康的な鳥、マザーグースから採取される羽毛は当然のことながら良質である。が、その数はそれほど多くない。一般は卵から孵って、早いものは若鳥として8~10週、長くて25週で肉と羽毛が得られる。グース農家は肉とその副産物である羽毛で生計を立てているからで、長く飼育すればそれだけ飼料など必要な、つまりコストの高いマザーグースを沢山育てるなどありえない。

通常は22~25週の良く生育した=成長したグースから採ったものと、マザーグースにそれほど大きな違いがあるわけではない。もちろんマザーグースの方が体格が良いものが選ばれるから羽毛が良いのは当然だが。ついでに言えば、マザーグースの羽毛も冬を越して夏を迎える時期の羽毛より、冬を迎える時期の羽毛の方が良いものが採取できる。

この件で検索していたら、私どもでロシア・ヴァルダイホワイトグースで販売している同じものをマザーグースとして販売している会社があった。原料が河田フェザーだから同じものだろう。非常にコストパフォーマンスが良い羽毛だが、マザーグースというほどではない。このヴァルダイには真にマザーグースともいえるステッキーダウンがある。(残念ながら現在では両方とも手に入らない) それ故、ダウンパワー420か430程度でマザーグースというのは片腹痛い。

結局のところ「マザーグース」「マザーダック」の多くは偽りかブレンドされている可能性が高い。
ハンドピック表示が使えなくなったので、と想像しているが、相も変らぬスペック信仰に右往左往しているのが布団業界ということになるのだろうか。

ちなみに、私の店でも1種類だけダウンパワー440のポーランドマザーグースがあるが、大切なのは羽毛の品質であって、それがマザーかどうかはどうでもいいのである。
もともとこのクラスは、もう少し安くて、ロットによってはより品質の良いシベリアングースを長年使っていたのだが、昨今の状況からトレーサビリティがしっかりしたものを、ということで、来春から泣く泣くポーランドに変えたということがあるのだが

食品偽装であれだけ評判になったのに懲りないのだろうか?

ホワイトグース
 

羽毛布団の通気性について

テーマ:羽毛ふとんのお話
先日ゴアテックスの羽毛布団について書いたので、関連して追記。

羽毛布団の生地には羽毛ふとん地流通協会基準というのが定められていて、それに準拠したものが作られている。このなかの基準に通気度(cc/㎠/s)というのがあり、1平方センチあたり1秒間に何ccの空気を通すかというものだ。
品質基準は 平織と綾織で3cc、朱子織で2.5cc以下、洗濯後(103法+タンブラー乾燥)で それぞれいずれも4cc以下となっている。羽毛は通常の生地だと吹き出しがでるので、高密度に織ってダウンプルーフ加工で吹き出しが出ないようにしている。通気度はこのダウンプルーフの度具合を示すと考えて良い。

実際の製品では2cc以下で作られているものがほとんどである。羽毛布団が流通し始めたころ、側から羽毛が出てくるのは即クレームになった。ダウンプルーフの甘い生地も多かったのだろう。そこで、クレームが出ないように、基準よりはかなり通気度は抑えられている。

特に最近増えてきたポリエステル混の生地の場合は通気度がさらに抑えられて1cc以下というものが多い。これはポリエステルの場合繊維断面が真円に近く引っかかりが少ないので、綿の生地に比べるとダウンが出やすくなるためだ。ポリエステルやナイロン系のダウンパーカーなどで生地から羽毛が飛び出てくるのをイメージしてもらえばいいだろう。

ところが、羽毛の良さは羽毛が呼吸することによって、温湿度を適度に調節することにある。通気度の低い生地を使うと、確かに吹き出しは少なくなるかもしれないが、通気が妨げられるから羽毛本来の良さはスポイルされてしまう。通気度の低い生地、例えば通気度0のビニールで布団を作ったら、中にどれだけ良い羽毛を入れようが意味が無いことになるわけだ。

一方羽毛もいろいろ。低級品に多いファイバー(羽毛屑)やネックフェザー(首のまわりの小さなフェザーで生地から吹き出しやすい)が多い原料では通気性が甘いと吹き出しやすいが、ファイバーが少ない高級品はそれほど通気性をシビアに考えなくても良い。最高級品であるアイダーダウンは絡みが強いので通気度が4ccでも吹き出しはほとんどない。同様に絡みの強い手選別のステッキーダウンなども3cc程度の通気性でも問題はほとんど出ない。

当然通気性が高い生地ほど、温湿度調節はバランスよく行われるので快適度は高いということになる。オーストリアから輸入しているHEFEL社の生地の通気度は2.5~3cc程度。上限ぎりぎりで、当然充填する羽毛を選ぶが使っていて非常に蒸れが少なくて快適である。

ゴアテックスの通気度は計ったことがないので正確には判らないが、口に当てて空気の出し入れを見た限りでは1cc以下。うたい文句は湿気だけは通すということで湯気をあてると確かに透湿している。・・・が実際に使うと結構蒸れる。うちの汗かきのスタッフが冬に使って「これではとてもたまりません」といって、通気度2ccの生地に仕立て変えたら問題ないと言っていたぐらいである。生地単独の透湿と、製品に仕立て上げた場合の透湿メカニズムは必ずしも一緒ではないからである。羽毛の場合は表生地と裏生地の両方で透湿する必要があるからだ。当のメーカーに勤めていた人が「あれは、確かに蒸れますよ」と言っていたので、そうなのだろう。通気性はないから、確かに中の羽毛は汚れないが、これって正しいことなのか疑問ではある。

昨日、生地屋さんを訪問したら、ゴアテックスもどきの加工を紹介していた。生地の通気性はほとんどないが、それでいいのだろうか?ポリエステル混の生地はますます増えているし、なんか変である。

世間はともかく
私どもの羽毛布団生地に要求する評価基準は「できる限り軽量で通気性の良い生地」である。これにできる限りゴミの少ない絡みの強い羽毛を入れて仕立て上げる。これが一番使用感が良いと思われるからだ。

HEFEL社

オーストリア・HEFEL社の工場


羽毛布団1月から価格改定のお知らせ

テーマ:羽毛ふとんのお話
眠りのプロショップSawadaでは、来年1月より羽毛布団の価格を改定させていただきます。

この2年間の羽毛原料の値上がりは尋常ではなく、グースが平均2.7倍、ダックが平均2倍という上げ幅です。一方で高品質の原料はますます少なくなっていく傾向にあります。眠りのプロショップといたしましては、手作りによる自家製造で全ての羽毛布団を提供しているため、何より品質第一に原料の選定を行ってまいりましたが、昨年3月の値上げ前に貯め込んだ原料も底をつき、正直せっぱつまってまいりました。

つきましては1月より価格改定をさせていただくとともに、一部のラインアップにつきましては入手困難になりますので継続中止といたします。また産地のトレーサビリティを上げるために、不安定なシベリアングースは在庫限りで中止、ポーランド・マズーリアングースに変更いたします。
なお、継続中止分につきましては在庫限りですが従来価格でのご提供となります。

羽毛原料価格の上げ幅は昨年の同時期に比べ 1.3~1.6倍となります。製品価格は側の価格が加わりますので、そこまでは上がりません。非常に心苦しいのはありますが、上げ幅に対しぎりぎりまで抑える努力をいたしました。品質維持のためにご理解いただきますようお願い申し上げます。

なお、同時に消費税アップに対応するために、1月以降、順次税抜き表示(総額併記)に価格を変えてまいりますので、併せてよろしくお願い申し上げます。

眠りのプロショップSawada
店主 沢田昌宏

ゴアテックスの羽毛布団って・・・

テーマ:羽毛ふとんのお話
東北のお客様から、羽毛布団のリフォームのご注文をいただいた。

早速送っていただいたところ、西川リビング(旧 大阪西川)製で、側生地には綿100%との表記。
いろいろとお客様と打ち合わせをして、早速解体を行ったのだが、何かおかしい。

まず、解体時に通常なら生地にへばりついているダウンファイバーがない。羽毛布団は長く使っていると、羽毛のファイバーやネックフェザーといった小さなパーツが綿の生地にへばりつくのだが、それがない。

表の生地の汚れに比べて、中の羽毛の汚れが非常に少ない。使用年数相応にヘタってはいるのだが、汚れがついていない。調べてみたら、サイドのラベルに小さくGOREとの表示。綿の生地にゴアテックスを貼り付けたゴアテックスラミネート生地の羽毛布団なのだ。

メーカー曰く、ゴアテックスラミネートは湿気を通して、汚れは通さないという。もともとアウトドア用で雨は入らないが湿気は通すという機能性が売りだ。その通りであれば、理想的なのだが実際にはそうではないことが多い。経験的にゴアテックスの羽毛布団は蒸れが気になる。ゴアテックスラミネートの羽毛生地は通気性が良くないのだ。今回の羽毛布団も生地を20cm四方にカットして通気を見てみたが、あまり良くない。Hefel社のような通気性の良い生地と比べるとよく分かる。

つまり、静的な平衡状態では湿気を通すのだろうが、睡眠生理的には最初のノンレム睡眠でおきる急激な発汗には対処できないのではないかと思われる。
結果、外気との交換はあまり期待できないので、確かに中の羽毛は汚れないのだろう。でも、これって本当に本来の姿だろうか?通気性の良い生地によって、空気の交換がスムーズに行われ、それを通じて温度と湿度が調整されると思われるのだ。

長年使われているので、一定の評価はあるのかもしれないし、ハウスダストを気にするヒトにはいいかもしれない。そうであっても、自然に眠るという私たちの持つコンセプトからはずいぶんと乖離しているように思われた。

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睡眠指導士や睡眠環境コーディネーターの資格を持ち、日夜快眠実現のために、いろいろと寝具やベッドの研究を続けています。

副業として、アートインナガハマなど、街中のまちづくりにもいろいろ関わっています。

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