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年頭コラム:環境と健康 - 睡眠の三方よしをめざし

テーマ:眠りのお話
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

年頭コラム:環境と健康 - 睡眠の三方よしをめざして
    眠りのプロショップSawada 代表取締役 沢田昌宏

この2年間というものは原発問題がクローズアップされ、環境問題の筆頭であった低炭素社会づくり(=CO2削減)はあまり語られることがなくなってしまいました。しかし、問題そのものがなくなったわけではありません。原発問題はもっとやっかいで、「原子力という人類がコントロールできないものは、そもそも使うべきでない」という思想と、「科学技術はそういった問題を克服し人類を発展させてきた」という思想のせめぎあいと、現実的に電力が不足したり、化石燃料の増加がCO2の増大をまねく一方で、福島のように一旦事故があると取り返しがつかなくなる、というリスク管理の問題がいれ混じって、さまざまな議論がなされています。

突き詰めてみると、CO2の問題も原発の問題も私たちの生き方の問題にかかわってくることではないでしょうか。江戸時代の日本は世界でも最も安全で、しかも資源効率が非常に高い社会だと、近年見直されています。一方で、今の現実世界はグローバル化経済の中で、大量生産・大量消費モデルが幅をきかせています。価格を下げるために海外で大量生産が行われ使い捨ての「だだくさ」な消費行動になっています。安いことは悪くありませんが、一方でこれは幸せでしょうか?

資源が有限である以上、いつまでも続くはずがありません。そうは思いつつも、今さら江戸時代の生活に戻ることもできず、日々が過ぎていきます。とはいえ、何らかのアクション、賢い選択をしていくことが必要ではないかと考えています。

当社は2007年に第9回グリーン購入大賞で中小企業部門において大賞をいただきました。グリーン購入とは購買時や販売時に環境に負荷をかけないような行動を推進していく、経済版環境保全運動の一種です。当時は、布団が粗大ゴミの№1になっている(東京都で年間60万枚)現実の中で、いかにして長く使うか、廃棄時にゴミを最小限にするかという視点から、1998年より独自にグリーン購入基準を定めて取り組んできたこと、羽毛のリフォームの機械を店頭に設置し、資源の再利用に積極的に取り組んでいることが評価されました。

長期間使用でき、可能な限り生分解可能な天然素材を使い、リフォームや打直しを通じて資源の再利用が可能な寝具の開発と販売を行っています。金属スプリングのマットレスを扱っていないのもこの理由からなのです。また、輸送時のCO2を削減するために、麻や真綿といった地元の素材を使った寝具の地産地消にも積極的に取り組んでいます。

最近ではヨーロッパから直接輸入する寝具も増えました。輸送時のCO2の問題はありますが、ヨーロッパ(特にドイツ語圏)は伝統的に環境問題に厳しく、天然素材を重視し長く使うというスタイルの寝具を開発しているメーカーが多いのです(例:Relax社)。自然な素材で自然な眠りをという当社のコンセプトに近いものを選ぶと、どうしてもヨーロッパものが多くなってしまうのです。

さて、その眠りですが、昨今睡眠の質が悪い、ちゃんと眠れていないという人がかなり増えています。ある研究によれば睡眠障害による社会的損失は年間3兆5000億円にもなるそうで、GDPの1%に届きそうな金額です。これらの損失は睡眠不足や障害によって発生する事故、作業効率の低下によってもたらされるといいます。逆に考えてみれば、睡眠を改善することにより、社会的損失は減るのです。事故がなければ、効率が良くなって残業が減れば・・・いろいろなことでCO2は削減されていきます。なにより、睡眠を改善することは健康(体だけでなく心も)の維持に直接つながっていき、増大する医療費の減少にも役立つのです。

睡眠による三方よしをめざす

私たちは「質の高い睡眠を提供する」ことにより、健康(心も身体も)に良し、地球環境に良しを目指し、長浜という地域でこのビジネスを発展させることにより地域(働き手)よしという、三方よしのを目指したいと考えています。今年の目標「快眠保証書づくり」はそのために必要なこととして取り組みます。眠りのプロショップSawadaの使命(ミッション)として。

LEDにご用心

テーマ:眠りのお話
久しぶりの投稿である。

今日は広島県から修学旅行で来られた高校生の受け入れ。といっても、それほど作業があるわけではなく、午前中は主に会社の方針や内容、睡眠についての知識をレクチャー。
睡眠時間を聞いてみたが、5時間睡眠という子もいた。

昨今、眠りを阻害する原因として問題になるのがLEDだ。省エネのためにLED照明がふえていることもあるが、もっとやっかいなのは、テレビとスマホと携帯ゲーム機。
バックライトにはほとんどといっていいほどLEDが使用されている。ところが、このLEDには睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を妨げる波長が多く含まれている。電球色にするとまあまあなのだが、昨今の夜のコンビニは絶望的ですらある。

ということで、睡眠時間が短い上に、睡眠の質も確保できないでは、体に不都合が多すぎる。
(という文章を打っている目の前はLEDの液晶ディスプレイなのだけど)

特に若い世代にはご注意を。

午後のお昼寝 【日本睡眠環境学会報告】

テーマ:眠りのお話
最近子どもの夜更かしが問題になっている。文部科学省は「早寝・早起き・朝ごはん」を訴えているが、まさにその通りだ。

睡眠環境学会では幼稚園と保育園での活動量と睡眠状態についての調査が報告されていた。
園においてどのような活動を行っているか、それと睡眠状態がどう変わってくるのかということである。

ここで問題にされていたのが、保育園で行われているお昼寝である。お昼寝は午後2時ごろからピークが来る眠気対策+脳の育成に必要なレム睡眠を補うものとして有効であるとおもわれているのだが、一方で、2時間におよぶ昼寝が、結果的に午後10時以降も活動量の多い子どもたちが増えているということである。

短絡的に結論を出すことができないのだが、お昼寝の長さを調節するのが必要なのではないかと思われる。

1日のリズムの中で午後2~4時は、午前2~4時に次いで強い眠気がおとずれる。その意味で、最近は見られなくなりつつあるが、イタリア・スペインなどのシェスタは睡眠生理に非常にかなったものなのだが、その一方で、これらの国の生産性が高くなかったことも事実である。だからといってラテン民族は・・・というわけではないが、お昼寝の効用をどう考えるかは大切であろう。

一般的には15分程度の軽い昼寝を推奨したい。

子どもの睡眠と寝具に関する一考察

テーマ:眠りのお話
先日、高月保育園で子どもの眠りについて講演をさせていただいた。
そこから、まとめてみた小論文である。ご一読いただければありがたい。



子どもの睡眠と寝具に関する一考察
吸湿発散性の乏しい寝具による寝床内湿度の上昇が睡眠低下を引き起こし、そのことが子どもの健やかな心身の育成を阻害しているのではないかという仮説について

滋賀医科大学睡眠学講座認定 睡眠指導士上級
日本睡眠環境学会認定 睡眠環境コーディネーター
沢田昌宏


昨今、乳幼児から小児の睡眠の質が低下していることが、さまざまにいわれている。
その背景としては、日本人全体の睡眠時間が50年間で1時間少なくなり、ライフスタイルが夜型社会に移行しているという社会の変化とともに、生活習慣などが変わってしまったところがあるが、睡眠科学的に分析をすると、大きく次の3つが原因として考えられる
・夜の行動が増え、就寝時間が遅くなっているという生活習慣の夜型化
・家の灯りやテレビ、携帯型ゲームなど夜の光刺激が多くなり、メラトニン分泌を妨げている
・吸湿発散性の乏しい寝具など睡眠環境の悪化

本考察では、寝具と子どもの睡眠の関係を取り上げ、現状分析から、その解決策へ向けて取り上げる。

睡眠と発汗
ヒトは眠ると発汗する。これは深部体温の熱放出を補助するためのものと考えられるが、その為に睡眠の初期段階、つまり最初の深いノンレム睡眠に同期して、その前の段階で最も多くの発汗が行われる。発汗はノンレム睡眠量に同期するかのように、次第に少なくなっている。大人で冬300cc、夏600ccが発汗されるとされている。

ノンレム睡眠(除波睡眠)と成長ホルモンの関係
睡眠曲線は、入眠後最初のノンレム睡眠時にステージ3・4の深い除波睡眠が最も多く見られ、約90分周期でレム睡眠と交互する。睡眠の経過とともに、次第に深い睡眠は少なくなっていくのが一般である。また、睡眠中に分泌される成長ホルモンは、最初の除波睡眠時に最も多く分泌され、この量は比例するといわれている。

不快な湿度が睡眠の質を低下させ、成長ホルモンの分泌を妨げる
すなわち、寝ている最中に不快感(暑い・寒い・うるさい・痛い等)を伴うと、睡眠の質が低下(=除波睡眠の減少)するが、睡眠初期の段階では不快な湿度が睡眠低下を引き起こし、結果的に成長ホルモンの分泌をも妨げるという因果関係が存在するのではないかと推測される。

正しい睡眠のリズム

快適な寝床内温湿度とその変化 温度33℃湿度55%±5%
一方、寝具内でもっとも快適とされるのは温度が33℃で湿度が55%±5%とされている。33℃はヒトの体表面温度にほぼ一致する。つまり、寝具は就寝前は寝室内温度とほぼ同じであるが、就寝することにより寝具は体温によって暖められ、次第に温度が上がって33℃付近で均衡する。一般に寝具の保温性が悪いというのは、体温によって暖められた寝具や体のまわりの空気の温度が逃げにくいということを示している。特に冬期などで寝具が寒く、保温性が悪いと皮膚は縮んで熱放出を妨げてしまうために、入眠が損なわれるということになる。一方、寝床内が33℃に上がって、同時に発汗が始まると、温度が上がるために一時的に相対湿度は下がるが、絶対湿度が急激に上昇する。33℃にもなり、湿度が70%以上になると蒸れ感が増え、不快指数が上昇する。寝床内温度が33℃ということからわかるように、日本の夏が暑く寝苦しい原因は湿度といってもいいだろう。

子どもの代謝と発汗
さて、乳幼児の基礎代謝量は成人にくらべ2~2.5倍もある。つまり非常に発汗が大きいと考えて良い。特に生後5ヶ月までの乳児は寝返りも自力で打つことができないために、背中面の湿度上昇が著しい。2011年の睡眠環境学会の学術会議においては生後5ヶ月の乳児の寝具内の湿度についての研究発表がなされたが、木綿わたのふとんが最も優れていたという報告が成されている。

アレルギーを気にしてしまう、子どもの寝具の現状
30年ほど前までは、ベビー布団、ジュニア布団といわれる子ども向けの布団は木綿わた入りの寝具がほとんどであった。これらは十分な吸湿性能を持っている。
ところが昨今の子ども向け寝具はほとんどがポリエステルわたである。この背景には、ダニやハウスダストアレルギー、アトピーなどの子どもたちが増加する中で、ホコリの少ない丸洗い可能なポリエステルわたに注目が集まったためである。ポリエステルわたは実際に使うと吸湿性が悪く、非常に蒸れやすいのだが、アレルギー対策に優先されてしまっているのが現状である。
また、子どもはおねしょなどをするために、洗える方が良いという見地からポリエステルわたが選ばれるケースも多い。

人生で最もプアーな寝具に寝ている今の子どもたち
なにより「子ども用はすぐに買い換えるから、適当なので良い」という考え方が親にあって、十分な性能の寝具を与えられていないことが多いのである。人生で脳と身体を創るもっとも重要な時期に、人生で最もプアーな寝具に寝かせられているというのが、現在の子どもたちの現状である。

寝具の吸放湿性能の現実と理想
寝具に必要なのは「保温性」に加えて良質な「吸放湿性能」である。吸湿性が悪い寝具だと、先ほどの例より、入眠後30分後の急激な発汗に対して不十分で蒸れ感が増大し、結果的には除波睡眠が減少するということが考えられる。その為に、最初の発汗に対応できるすばやい吸湿性能が求められるのである。
ところが吸放湿性能はJISの試験では12時間後の性能を測るために、ポリエステルなどの合成繊維(特に中空タイプの繊維)でも良好な数字が出てしまう。結果的には、実際には汗の吸い取りがあまり良くないのに、「吸湿性が良い」などと表現されることがあるのが問題といえる。
昨今は住宅の気密性・保温性が向上しているために、かつての寝具は保温性がもっとも求められたが、現状の睡眠環境では湿度を快適にコントロールすることが求められる。

羊毛を使うと成長が早いというケンブリッジ大学での研究
イギリス・ケンブリッジ大学で行われた研究で、未熟児にポリエステルのふとんと羊毛のふとんをそれぞれ使ったところ、羊毛のふとんで寝た方が成長が早いという結果になった。羊毛は吸湿性能もさることながら、放湿性能に優れているために、寝床内が蒸れにくくなるという特徴を持っている。これも仮説であるが、羊毛のふとんの方が快適で(ヒトと同じ動物性素材である)、ぐっすり眠ることができたために、成長ホルモンの分泌が多くなったと考えられる。

合成繊維の寝具から天然素材の寝具への回帰
発熱や蓄熱、逆に冷熱などの新素材の登場で、世の中は合成繊維素材が非常に増えている。しかしながら、良好な吸湿性能と使用感の自然さを考えると、特に代謝量の多い育ち盛りの子どもについては天然素材の寝具を見直すべきではないだろうか。もちろん、天然素材には品質に差があるために、ハウスダストなどの面からも、ホコリの少ない良質なものを使うことが必要であろう。

考察:吸放湿性の悪い寝具が、子どもの心と身体の健全な成長を妨げているのではないか?
最近の子どもは切れやすくなったといわれる。また、扁桃腺肥大による閉塞性無呼吸症候群の子どもは睡眠障害が発生しており、ADHD(発達障害)のような行動を起こすことが知られている。この場合は、原因を取り除くことにより睡眠障害が無くなることがわかっている。となれば、子どもの睡眠を改善することにより、心と身体の安定が保たれることが期待できる。
子どもの睡眠力低下は夜型社会や、光環境などにも原因があるが、吸放湿性の悪い寝具にその原因の一端があるのではないかというのが、本考察の結論である。

日本睡眠環境学会の学術会議を終えて

テーマ:眠りのお話
先ほど東京から帰ってきた。金曜日の新幹線というと、満席である。

さて、いままで日本睡眠環境学会や日本睡眠環境研究機構などにおいてはどちらかというと、寝具の物理的特性、すなわち保温性や耐久性などを重視してきたところがあった。それはそれで、一定の評価ができるのだが、実際に睡眠して良いかどうかとは別物だ。

すなわち物理的特性が優れているからといって、寝心地が良いとは限らないのである。しかし、私たちの現場では、もちろん耐久性のような項目も重要だが、なにより、使って良い睡眠をとっていただくことが最も重要なのである。

そういう意味では久しぶりに参加した今回の会議は、実際の使用感、寝心地といった物の評価をどうしていくかということがテーマに上げられていて、良かったのではないかと思う。これらの、いわば使用感評価、官能評価といったものは、例えばビラベックの羊毛敷ふとんを使うと、寝心地が格段にアップする、というように、いくつかは現場では経験的に得られていること(逆に学術的な先生方はご存じない)なのだが、学問的にエビデンスをどのように取るかということになると、まだまだである。

私の店では上質な自然素材を使うと、リラックスして自然な眠りが得られる、という、経験的に納得いただける仮説をPRしているが、そのエビデンスを取るとなると、多くのパラメータを持った実験やデータの積み重ねが必要で、実際にするとなるとやっかいではある。

今回は「私らしい、シンプルで上質な自然の眠り」というコンセプトを整理いただくヒントをいただいたので○。

いくつかのトピックはこのあと紹介することにしよう。

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ねむりはかせ

曳山博物館前の眠りのプロショップSawadaのオーナー
睡眠指導士や睡眠環境コーディネーターの資格を持ち、日夜快眠実現のために、いろいろと寝具やベッドの研究を続けています。

副業として、アートインナガハマなど、街中のまちづくりにもいろいろ関わっています。

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