2つの地方博 ポートピアとフードピア

テーマ:まちづくり
SirMurai先生の記事「博覧会って、そんなもの!」に触発されて、かつて行われた二つの地方博の意義を辿ってみたい。

それは奇しくもユートピアという言葉を取り入れたポートピアとフードピア。
なぜか両方ともご縁がある。

ポートピアは神戸で1981年に開催された。ちょうど前年に大学を卒業したのだが、在学当時は埋め立てがほぼ完了し、コンテナヤードが作りかけていた頃で、何もなく、時々バイクで気が済むまで走りにいったものだ。

ミナト・コウベ、風見鶏の街というハイカラではあるが、近代的なイメージが薄かった神戸市が神戸港沖に埋め立て地を造成し、新都市を造成、そのこけらおとしに開催されたのが神戸ポートアイランド博覧会。後に続くさまざまな地方博のさきがけとなった。

埋め立て用の土砂は、現在では西神地区と呼ばれる山の中からとりだし、そこにも都市や住宅を造るという一石二鳥を狙った企画で、この当時 株式会社神戸市と呼ばれた。

ポートピアの狙いは、神戸がポートアイランドをきっかけとして、新しい近代都市として生まれ変わろうとしているというイメージづくりを担ったものだ。この狙いはポートピアの成功とともに、うまくあたったと思う。

神戸というブランドイメージの刷新がその目的だったといえるのではないか。

一方、フードピア金沢は1985年から始まった。プロデューサーは出島二郎先生である。先生にお出会いしたのは1992年のことだが、1989年に日本青年会議所に出向した折に、アワード(全国のJCの事業を褒賞するもの)の現地調査員として、後に会頭となった当時副委員長の村岡君らと金沢を訪れアワード申請があったフードピアについて学ぶ機会を持つことができた。

フードピアのフードはFoodと風土をかけた言葉だ。コンセプトノートを全て紹介することはとてもできないが、冬の日本海の食の魅力を、金沢という武家文化の空間で最大限に活かしたイベントである。それはポートピアと違い、パビリオンはほとんど無かった。金沢や石川県の料亭やレストランなどで、一流文化人と一緒に食して歓談するという「食談」が事業のメインである。当時3日間に50人以上の著名人が金沢を訪れた。元々持つ空間を食談を通じてパビリオンにするという発想は、それまでの(今でも)地方博にはなかった斬新なものだった。

もっと斬新なことは1990年を本祭のスタートとし、それまでの5年間を実験祭と位置づけ、能登へなど地域を広げたりしながら過程をふんで、コンセプトから生まれるイベントの深みを造っていったことにある。

冬の暗い裏日本のイメージをひっくり返して、ものの見事に上質なイメージづくりを作った 金沢の都市ブランドを築きあげた屈指のイベントといえる。

フードピア金沢については、当時滋賀総研にいらっしゃった織田先生などの本もよませていただいたが、その後出島先生との出会いがあり、秀吉博覧会を通じてお話しを聞くなかで、徐々にそのコンセプトを理解することできた。バブル全盛期に箱物を作らず、量より質を追求した考え方には、今なお新鮮である。

そして、我が近江という国の持つポテンシャルを気づかされるのだ。

「何もないところを見せることが、もっとも創造的である」 言葉で判っても、多くの人を説得するにはなかなか厳しい概念だ。博覧会前に先生はおっしゃった。「小谷城の価値を理解する人多く来る。そういう時代が来ている」

小谷城に登った3万人以上の人々がそれを証明しているのだろう。100万人来場されるより、そのことの方が遙かに価値が高いのだと。

コメント

  1. 2011/07/22 09:39
    建築の好きだった私、六甲の土を地下トンネルで日々海に運ぶという発想に大きな魅力を感じていました。その背後に、こうした遠大な都市のイメージ改造の理念が隠されていたと考えると興味深いことです。そして、見事に、神戸ブランドが定着、さすがです。
    フードピアについては、全く知りませんでしたが、またまた新鮮な発想ですね。本祭と実験祭、その言葉の新鮮さ響きもいいですね。今、金沢と聞いたときのイメージは、こんな人々の長い努力の上に成り立っていることがよく分かりました。
    それにしても、よく学ばれていて、感動です。今後のご活躍を期待します。
    追伸 昨夜のコメントありがとう。それと、本物を愛する人、本物の価値を理解する人が多いこと、小谷城に登った3万人、浅井歴民へやって来た5万人が証明と・・・。(まだ言う!笑)
    2011/07/25 09:25
    そうですね。結局本物が一番強いということでしょうか。

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