花桃
上生菓子「花桃」
お花屋さんに、桃の花が菜の花と共に束ねて売られていたので買ってきました。
とても可愛らしい花。さて、どのように生けようかと思案中…。
ここで、ふと思い出したのが、「梅~は咲い~たか 桜はま~だかいな♪」というお唄。
桃の花は、梅と桜に挟まれていて、少し印象の薄い花かもしれませんね。
この唄は、かの有名な桃屋の「ごはんですよ」のCMに使われていましたね。(今も流れていますか?) ユーモラスなアニメーションと、声優さんの歌声が、記憶にしみこんでいます。
桃の花、もうすぐ桃の節句です。お雛様の隣に生けたいと思います。
菜の花
上生菓子「菜の花」
菜の花があちこちに咲き乱れるのは、まだもう少し先になりそうですが、和菓子は季節先取りですので、あしからず。
菜の花と言えば、この歌を思い出します。
♪菜の花ばたけに入り日薄れ 見渡す山の端霞みふかし♪
思えば歌詞の意味も理解せず音楽の時間に歌っていました。
中学3年の音楽の時間に「歌のテスト」なるものがあり、その時は教科書の歌の中から好きなものを選んで歌いなさい、というものでした。そこで、女子が歌ったもので一番多かったのが、たしか「ふるさと」(うさぎ追いしかの山~)だったと思うのですが、私は「菜の花ばたけ」ではじまるこの歌の情景が好きで、タイトルは忘れましたがこの曲を、深く考えずに選んでしまったのです。ところが、いざ歌ってみると、この歌、音域は広いし音程はとりにくいしで全くもって歌いづらい。声は裏返って、えらいことになってしまいました。よく考えると「ふるさと」の方は、出だしから徐々に徐々に音程が上がっていくものの、音域はそう広くなく、割に歌いやすい曲。みんな賢いわ~、と後になって思いました。
物事を深く考えないのは、今もあまり変わっていません。情けないことに…。
「菜の花」にまつわる思い出でした。
春告鳥(うぐいす)
上生菓子「春告鳥」
うぐいすのことを「春告鳥」とは、昔の人は良く言ったものです。ほんとうに、うぐいすの声が聴けると、ああ春が来たなあと思いますね。
毎年、全く同じ時期に全く同じ方角から全く同じ鳴き方で声が聴こえて来るので、「毎年おんなじ奴が来てるんとちがうかなあ」などと思ってしまいます。今年も去年のうぐいすが、またやって来てくれるといいなあ、なんて思っています。
もう何年も前のこと。ある中学校のELTの先生が、和菓子がお好きでよく買い物に来て下さいました。若いとてもチャーミングな女性でした。
カナダ出身のその先生、当時まだ日本語があまりお得意ではなかったようで、買い物の際には、かたことの日本語と身振り手振りを交えてコミュニケーションをとって下さいました。方や私は、かたことの英語(いえいえ、ほとんど単語のみ)と同じく身振り手振りでお菓子の説明をしていました。
そこで、ちょうどこの季節。「春告鳥」を説明するのに、私はどう言えばいいのかわからず、思わず手を横に広げてひらひらさせ「バード」と一言言いましたところ、先生はわかってくれたのですが、後ろで店主が苦笑、いや失笑していました。
このELTの先生、お勤めの期間を終えて、一旦故郷へ帰られたようなのですが、数年後ひょっこりお見えになり、懐かしくて感激していましたら、隣に背の高いにこやかな日本人男性が…。
「私、結婚したんです。今は大阪(だったかな?)に住んでいます。長浜に久しぶりに来ました。懐かしい!」と、先生はとても流暢な日本語でおっしゃられました。
思わず「先生、日本語お上手になりましたねえ。」と遠慮なく日本語で言うと、同伴されていたご友人の方が、「愛の力ですよ。」と一言。まさに!
春告鳥の上生菓子を見ると思い出す、ELTのかわいらしい先生。もう一度会いたいです。
かきもち
茨木のりこさんの詩に「答」というタイトルのものがあります。一部抜粋して紹介します。
ばばさま
ばばさま
今までで
ばばさまが一番幸せだったのは
いつだった?
十四歳の私は突然問いかけた
ひどくさびしそうに見えた日に
来しかたを振り返り
ゆっくりと思いめぐらすと思いきや
祖母の答は間髪を入れずだった
「火鉢のまわりに子供たちを座らせて
かきもちを焼いてやったとき」
ふぶく夕
雪女のあらわれそうな夜
ほのかなランプのもとに五,六人
膝をそろえ火鉢をかこんで座っていた
その子らのなかに私の母もいたのだろう
ながくながく準備されてきたような
問われることを待っていたような
あまりにも具体的な
答えのはやさに驚いて
あれから五十年
ひとびとはみな
掻き消すように居なくなり
(後略)
この詩を思い出したのは、盆梅展の売店でこれを買って来たからです。
昔懐かしいかきもち。素朴な味わいで、なんともいえないふんわりとした食感。私も昔、硬いかきもちをあぶってもらって食べた記憶があります。
このばばさまの、なんと幸せな記憶。人には大きさは様々なれど、ひとつ握って離せない大切な記憶があるのですね。うーんと年をとってもなお色あせないような。ささやかではあっても色濃い記憶。私にはどんな記憶が最期までのこるのかと、今から楽しみです。
この詩の最後はこう結ばれています。
「たった一言のなかに籠められていた
かきもちのように薄い薄い塩味のものを」
キラキラとまぶしく輝いてなどいなくても、薄い薄い塩味のような、そんな幸せが、案外一番心に残るのかもしれません。
ところで、ここからは宣伝になり恐縮ですが…。長浜盆梅展の会場には、長浜の物産が一堂に集められた売店があります。先ほどのかきもちも売っています。
そして当店は
左から「梅だより」「浜ぎぬ餅」「きんつば」
この三品を販売しています。
盆梅展にいらっしゃる方がありましたなら、是非売店にてお買い求めくださいませ。お待ちしております。
玉椿
上生菓子「玉椿」
椿は山茶花と並び、真っ白な雪の中に美しく映える、冬の花の代表格です。
でも、どちらかというと、山茶花が庶民的な親しみやすい花であるのに対し、椿はどこか高貴なイメージがあるのはどうしてでしょうか。
そういえば、椿は「椿油」という香りの高そうな(お値段も高そうな)油が取れるのですよね。そして、石鹸、美容液、シャンプーなど、様々な女性の化粧品に椿のエキスが使用されているようです。昔から美女たちが愛用してきたこの椿、その高貴な佇まいを見ているだけで、美しくなれそうな…いえいえ、それはありませんね。
「椿」という言葉には、いろいろな字が加えられ、いろいろな花の表情が表されます。
今日のお菓子は「玉椿」ですが、他に「乙女椿」「寒椿」「山椿」「八重椿」「紅椿」「香椿」他にも様々。
梅や桜もそうですが、昔から人々は花の名前に一文字二文字を付け加え、その時その時の、花が微妙に変化して咲く様子を、上手に表現していたのでしょうね。