ネット帝国主義

テーマ:仏願寺住職のお話
団塊世代の私にとっては、帝国主義という言葉は耳に懐かしい。
新聞でもテレビでも、また大学でも、帝国主義という言葉によって、アメリカ帝国主義を打倒し、真の理想社会主義国家確立という言葉に酔いしれたものである。

帝国主義とは、一つの国家が、自国の民族、文化、宗教、経済体系などを拡大するため、新たな領土や天然資源などを獲得するために、軍事力を背景に他の民族や国家を積極的に侵略し、さらにそれを推し進めようとする思想や政策のことである。
イスラム教の政教一元論のもと領土拡大を謀ったオスマン帝国、政教分離をいうものの実際にはキリスト教を全面に掲げた西欧諸国の植民地主義などはその典型であり、宗教を利用し、文化・習慣まで征服してしまったといっていい。
その点、仏教は帝国主義的ものはなく、宗教的伝播でしかなかった。

目を歴史全体に見ると、古代における地方部族間闘争、中世における国家間の戦争もその一種である。
ましてや近世における植民地主義は帝国主義そのものといえるだろう。
そして、第一次・第二次世界大戦は、植民地主義とそれへの反対勢力との戦いであったといってよい。
しかし、第二次世界大戦終了後は、国連という世界の目もあり、露骨な植民地主義的帝国主義はなくなったといえるだろう。

しかし、意識しないところで、軍事力によらず、テレビ・映画・雑誌等のメディアによる、悪くすると洗脳操作により、政治・経済・文化等を支配する、目に見えない帝国主義が発生した。
戦後、バブルに日本が浮かれている時、アメリカによってなされた帝国主義である。
いや終戦後まもないころのパンと牛乳による給食もそうであった。
ジェームズ・ディーンが映画でジーンズ姿になり、オールドヘップバーンがティファニーの宝飾品をつけるとそれらが全世界に流行するというものである。
コマーシャルではあるが、影像洗脳による経済・文化征服ともいえる。

もっと巧みなものは、心理学利用したのもある。
例えば、サブリミナル効果である。
一分間二十四コマのフィルムの中に一コマ、コーラ等の清涼飲料水を入れると、目には見えなくても、ついついそれが飲みたくなるというものである。
他にも種々あるそうであるが、私は知らない。
これらを情報帝国主義というのだそうである。
もちろん、それらの方法は現在禁止されているようではあるが。

ところで、現在はネット帝国主義というのだそうだ。
コンピューターのハード面では、日本等のアジアが一歩も二歩も進んでいるが、それを起動する為のインテルCPUやマイクロソフトウィンドウズはアメリカ製であり、莫大な利益がアメリカのものになっている。
また広告もネットが新聞を超え、テレビをも超えんとしている。
雑誌や書籍のような紙の媒体も圧迫されている。
その上、ネットで流される政治・経済情報は世界を席巻するばかりである。

目に見える帝国主義が、目に見えなくなったが、現在では目に見えるものの、その本当の目的が分からない。
しかも、その内容と方法を教わっても、それの上を行く方法があれば、もうお手上げである。

ネットを利用し欲望にまっしぐらな人間が栄える。
本当に恐ろしい現代社会になったといわざるを得ない。

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