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英語の唄

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学生時代、最も嫌いだった教科は英語。

中1の1学期でさっそくつまずいた。

Iのときはam、youのときはare、Heのときはis、なぜ変わる?まったく意味がわからなかった。1個に統一せぇ!しかもbe動詞などという偉そうな名前までついている。

中学の3年間、英語の平均点はおそらく20点ぐらいでなかったか。記号問題の奇跡のみに賭けていた。

最初に英語が嫌いになったきっかけは中1の中間テスト。

英語の先生によるヒアリングテストがあった。

スピーカーから聞こえる先生の声を聞いて、VかBかCか選べという問題。

雑音の酷いスピーカーに耳を澄まし、集中していたが、聞こえてきた声は「・・・・・・・・・・・うぃ」

?確かに先生は「うぃ」と言った。

テスト後、友達と確認しあったが、やはりみんな「うぃ、ってなんやねん!」と言っていた。

わけがわからないが、恐らく近いのはVだろうと相談しあった。

だがその後わかった正解はB

なめんな!と一気に嫌いになった。

だが、あれほど嫌いだった英語が高校では比較的得意になり、平均点以上は取るようになった。

その主な理由は女性の先生が若くきれいだったから。

先生次第でどんな教科も得意になるのね。

迷いの唄

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数年前、財布を落とした。

落としたのは初めてではないが、やはり慣れるものではない。

用事で京都まで行った帰り、電車の中で財布が無いことに気がついた。周りの乗客の目など気にせず、一心不乱に探したが見つからなかった。

奇跡を信じ数日待ったが、誰からも連絡は無く、しかたなくキャッシュカードや免許証の再発行手続きを済ませた。が、手続きが終わった途端、1本の電話が鳴った。

京都駅近くの警察署からだ。どうやら財布を誰かが拾って届けてくれたらしい。

見つかって嬉しいが、どうせならもう少し早く連絡して欲しかった、というのは贅沢か。

以前財布を落とした際に、現金やカードが抜かれていたので、今回は念のため確認したところ、落とした状態のままらしい。良かった。

次の日曜日に、その警察署まで財布を取りに行った。京都までの電車代は痛かったが、仕方あるまい。

警察署に着き、名前を告げると、見慣れた革の財布が警官の手によって運ばれてきた。1週間ぶりの再開。今度は大切にしてやるぞ!と抱きしめたくなる。

聞くとJRの職員さんが届けてくれたらしい。やはり切符を買った際に、券売機の前で置き忘れた可能性が高い。拾ってくれた方、本当にありがとう。

しばし感傷に浸った後、財布の中身をそっと覗くと・・・無い!現金が無い。

やはり現金は抜かれていたのか・・・。でも電話で確認したはずなのに。

よくよく聞くと現金だけは別に保管してあるらしい。なるほどそういうことか。

警官の方が取りに行ってきますと言って席を外した。

するとそこへ1人の青年が息せきかけてやってきた。スーツ姿で、年は20代前半ぐらいか。

別の警官が対応したが、青年は「これから大事な取引で東京へ行かねばならない。あわてて家から出てきて財布の中身を見たら、現金が足りない。もう新幹線の出発時間に間に合わない!必ず返すのでお金を貸して欲しい!」と言葉を早めて継げた。

青年の顔色は悪く、冷や汗が流れている。

警官は話は聞いたもののダメだと言って取り合わない。だが、どうしても、どうしてもと言って青年は食い下がる。

警官が不意にいくら必要なの?と聞いた。すると1万円あればなんとか、と青年は答えた。

そこへさっきの警官が俺の財布の中身1万数千円を銀行のトレーのようなものに入れて持ってきた。

青年はあきらかにその現金に目をやった。

しばしの沈黙の後、彼の視線を遮って、俺は受け取りの用紙にサインをする。

確かにこの金は奇跡的に戻ってきたお金だ。一度は諦めたもの。おそらくこの青年の話は嘘ではないだろう。しかし貸して戻ってくる保証は無い。

ここで俺が貸してやるよ!とでも言えばかっこいいのか?

様々な葛藤と戦いながら、とうとう俺は現金を受け取って警察署を出た。

彼はその後、取引に間に合ったのか・・・。あの時貸していれば彼は喜んでくれたのだろうか。財布の中の福沢諭吉を見ながら、そんなことを考えている。なぜ貸してやるの一言が言えなかったのか。

自分の器の小ささを嘆いている。

若草山の唄

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中学校の時、嫌な感じはしないが、いちいちうるさい教師がいた。

「お前らうるせえんだよぉ!」が口癖。授業中、ザワザワ私語が多くなると、黒板を叩いてその言葉をよく吐いていた。

俺たちが掃除をサボっては大声で注意し、遅刻しては大声で怒られた。まぁ基本的に俺たちが悪かったのだが、反抗期の中学生にはすべての言動に腹が立った。

一度先生の椅子に画鋲を置いておいたら、何も知らずに座った先生が「痛ぇ!」と叫んで、授業を中断して怒り出したので、さらに今度は画鋲を接着剤で椅子に貼り付けておいた。

当たり前だが怒られた。

焼けた肌に、芸術的な七三分け。その先生は、いつも小難しい顔をしていた。

みんなでなんとかあの先生をギャフンと言わせなあかんなぁと話し合っていた。

ある日、家でなんともなしに母親にその先生の話をしたら、名前を聞いたとたん、同級生だと言い出した。まさか、と思ったが、どうやら本当らしい。

何か良い情報がないかと、詳しく話を聞いていると、面白い話を入手した。

どうやらその先生は小学生の時に修学旅行で奈良へ行った際、走ってはいけないと注意されたにもかかわらず、若草山で山頂から走り下った挙句、転げ落ちて救急車で運ばれたという伝説を持っていた。

さっそく翌日、その先生がまたいつものように怒り出したので、「ちょっと先生、若草山から転げ落ちんといてください!」と話すと、急に顔色が変わり、「ぐぅ・・」と言ったきり押し黙ってしまった。

どうやら人生の汚点らしい。

「どこでそれを・・・」と小さくつぶやいていたが、結局説教は中断された。

その話は学年中に広まり、その先生が怒るたびに生徒の誰かが「先生、若草山から・・・」と言い、説教を短縮するようになった。

その先生に、失敗を笑い話にする力があれば・・・と思ったがどうやらそういう性格ではないらしい。今思うと少し同情する。

尋問の唄

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5年程前、仕事柄毎週月曜日が休みだったので、かなり退屈だった。友達も月曜日は当然仕事なので、遊ぶこともできず、家でダラダラしているだけで過ぎてしまうことが多かった。

ある日、ふと海が見たくなった。無駄に時間を過ごしてしまうなら、パチンコでお金を無駄するぐらいなら、そのほうが良いだろう。

敦賀まで車で出かけることにした。

下道で1時間ほどかけて、港の近くの公園までやってきた。海へはなんどか来たが、港は初めて。景色も良いし、とりあえずタバコでも吸おうと車を降りようとした矢先、パトカーが突然俺の車の後ろに通せんぼをするようにピタッと止まった。

何や!?とパニックになりながら、何も悪いことをしていないのに再び自分の車に乗り込もうとしたら、後ろから「君、君!」と呼び止められた。

ぇ、やっぱ俺?と思いながら、「何すか?」と返答すると、「何しに来た?」とたずねられる。

何もしにきていないので、曖昧に答えると、「この辺りには家出人が良く来るんや。君、家出ちゃうろなぁ。」とむちゃくちゃなことを言われた。

なんで海に来ただけで家出やねん!と思ったが、免許証の提示を求められ、仕事や家族についてなど根掘り葉掘り聞かれ、何やらメモまでしている。

いったい何が調べたいのか。そして最後に「ここは釣り禁止や!したらあかんで!」と言い去っていった。

くそっ!意味も無く尋問されて頭にきたので、とりあえずタバコを吸おうと海の側まで行きふと辺りを見ると、釣り人が数人。

あの警官、俺を尋問してる間があったら、こいつら注意せえ!と思いながら、やっぱり来週からは家にいようと誓った。

コンポの唄

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俺が中学生の頃、音楽の主流はカセットテープからCDに移り・・・いやCDの出番はもっと早かったであろうが、自分がそれを手にしたのはかなり遅かった。

初めてCDコンポを買ってもらい、俺は音楽に急速にのめり込んでいった。

朝は音楽をタイマーにして起きるのが幸せで、これまでのジリジリという目覚まし時計から、好きな音楽で起きる喜びを体感していた。

それでも中学生のお小遣いではCDはなかなか買えず、姉や友達からCDを借りてはテープにダビングする。それが日課であった。

録音の際、当時のコンポはあまり性能が良くなく、音量を大きくしてテープに録音したほうが音がきれいで聞きやすい。だが、大きなスピーカーなので、そのままだと大きすぎて聞くに耐えない。だが、きれいに録音することにはこだわっていたので、ヘッドフォンを挿して、音量を最大にして録音をしていた。

中学1年生のある日、俺は家族旅行に出かけた。じいちゃんとばあちゃんは留守番である。

俺は出かける前に、持って行くカセットテープをあわてて録音をした後、ヘッドフォンを抜いて、音量を下げるのを忘れていた。完全に忘れていた。

翌日の朝、タイマーが作動。じいちゃんとばあちゃんがパニックに陥ったのは言うまでもない。

俺の部屋からブルーハーツのリンダリンダが超大音量で流れ出した。

最初の「どぶね~ずみ・・・」の静かなあたりで、ん?なんや、と思ったらしいが、サビの「リンダリンダ!!!・・・」のところで鼓膜が破れるほどの衝撃波を受けたようである。

じいちゃんは耳を押さえ、苦しみながら俺の部屋までたどりついたものの、停止ボタンがわからなく、最終的にコンセントを抜いて、危機から脱出したようである。

想像しただけで頭が痛くなる。2人の鼓膜が破れなくて、ホントに良かった。
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